はじめに
「必要な人材が見つからない」「採用コストが高騰している」「即戦力が欲しいが育成に時間がかかる」――。多くの経営者が人材確保に関する課題を抱えています。特に中小企業や新興企業では、限られた予算の中で適切な人材を確保することに苦心されているのではないでしょうか。
そんな中で注目を集めているのが、副業人材の活用です。従来の正社員中心の人員計画に、副業という新しい働き方を組み合わせることで、より柔軟で効果的な人材戦略を実現できる可能性が広がっています。
本記事では、人員計画の基本から、副業人材の効果的な活用方法まで、実践的な知見をお伝えしていきます。
まずは整理しましょう 人員計画・要員計画・採用計画の違い
人材に関する計画には、「人員計画」「要員計画」「採用計画」という3つの重要な概念があります。これらは密接に関連していますが、それぞれ異なる目的と役割を持っています。
要員計画:人材の「量」を決める
要員計画は、事業計画を実現するために「何人の人材が必要か」という量的な側面を計画するものです。例えば、「来年度の売上目標を達成するために、営業部門は現状の15名から20名体制にする必要がある」といった具合です。要員計画では、人数の目標と達成期限を明確にします。
人員計画:人材の「質」を考える
人員計画は、要員計画で定めた人数に対して、「どのような人材をどこに配置するか」という質的な側面を計画します。「20名体制にする営業部門には、新規開拓のスキルを持つ人材を3名、既存顧客担当を5名、マネージャー層を2名」といった具合に、必要なスキルや経験、役割の組み合わせを検討します。
また、その実現方法として、新規採用だけでなく、社内異動や副業人材の活用なども含めて検討します。つまり、人員計画は要員計画を具体化し、実行可能な形にするものと言えます。
採用計画:人材の「獲得方法」を定める
採用計画は、人員計画に基づいて「どのように人材を採用するか」を具体化します。採用手法の選定、募集要項の作成、選考プロセスの設計、採用時期の設定、予算の配分など、実務的な計画を立てます。正社員採用における新卒・中途の配分や、副業人材の活用方針なども、ここで決定します。
3つの計画の関係性
これら3つの計画は、以下のような順序で策定していきます。
- まず要員計画で必要な人数を決める
- 次に人員計画でどのような人材をどう配置するかを決める
- 最後に採用計画で具体的な獲得方法を決める
例えば、ある企業がECサイトの立ち上げを計画している場合、以下のような流れになります。
要員計画:「ECサイト運営のために5名体制が必要」
↓
人員計画:「ECサイト構築の経験者1名、商品企画2名、運営担当2名。うち商品企画1名は副業人材の活用を検討」
↓
採用計画:「ECサイト構築経験者は中途採用、商品企画は社内異動1名と副業人材1名、運営担当は新卒採用」
このように、3つの計画は段階的に具体化していく関係にあります。
副業人材の視点
収益計画を立てる前に人材を雇うケースが散見されます。具体的には、要因計画を立てずに都度、不足したポジションを穴埋めするという動き方で、中小企業で数多く見られます。この方法には、必要な人材を採りに行くことができるというメリットがある一方、早急にポジションを穴埋めできるかは賭けになるデメリットがあります。直接部門でこれをやってしまうと、穴埋めの前に離職が連鎖し取り返しのつかないことになる危険が非常に大きいのです。
先見の明をもって要因計画から取り組んでみましょう。企業経営が安定します。
人員計画の重要性を理解する
経営における人員計画の位置づけ
事業を支える経営資源として、「ヒト・モノ・カネ・情報」が挙げられます。この中で最も重要なのが「ヒト(人材)」です。なぜなら、どれだけ優れた設備や資金、情報があっても、それらを効果的に活用する人材がいなければ、企業の成長は望めないからです。
人員計画とは、このような重要な経営資源である「人材」を、どのように確保し、配置し、育成していくかを具体化するものです。適切な人員計画があってこそ、事業計画や経営戦略を確実に実行に移すことができます。
人員計画が不十分な場合のリスク
人員計画が不十分だと、以下のような問題が発生する可能性があります。
第一に、必要な人材が必要なタイミングで確保できないリスクです。人材の採用や育成には時間がかかります。計画性がないと、事業機会を逃してしまう可能性があります。
第二に、人件費の増大です。急な人材ニーズに対応するために、予定外の採用や派遣社員の活用を余儀なくされ、結果として人件費が膨らんでしまうケースがあります。
第三に、既存社員の負担増です。人材が不足する部署では、既存社員に過度な負担がかかり、モチベーションの低下や離職につながる可能性があります。
人員計画の立て方 基本のステップ
Step1:現状分析
人員計画の第一歩は、現状を正確に把握することです。具体的には以下のような観点から分析を行います。
まず、部署ごとの業務量と人員数のバランスを確認します。単純な人数だけでなく、どの時期にどの程度の業務が発生するのか、季節変動も含めて把握することが重要です。
次に、現在の社員のスキルレベルを評価します。必要なスキルが社内で充足できているか、今後必要となるスキルは何か、といった点を明確にしていきます。
また、年齢構成や勤続年数なども重要な要素です。将来の幹部候補の育成や、技術の伝承なども考慮に入れる必要があります。
Step2:将来予測
現状分析が終わったら、次は将来の予測を行います。この際、以下の要素を考慮する必要があります。
まず、事業計画との整合性です。新規事業の立ち上げや既存事業の拡大など、事業計画に基づいて必要となる人材を予測します。
次に、技術革新の影響です。デジタル化やAIの進展により、必要とされるスキルは急速に変化しています。この変化を見据えた人材の確保・育成を計画に織り込む必要があります。
さらに、社会環境の変化も考慮します。働き方改革や副業・兼業の普及など、労働市場の変化も人員計画に大きな影響を与えます。
Step3:人材ニーズの定義
現状分析と将来予測を踏まえ、具体的な人材ニーズを定義していきます。この際、正社員と副業人材のそれぞれの特性を理解し、適材適所を見極めることが重要です。
正社員が適している領域としては、以下のようなものが挙げられます。
経営の中核を担う業務や、長期的な人材育成が必要な領域は、正社員を配置することが望ましいでしょう。例えば、経営企画や人事、コアとなる事業の運営などが該当します。また、社内の複数部門との調整が必要な業務や、機密情報を多く扱う業務も、正社員が適しています。
一方、副業人材が効果的な領域としては、以下のようなものがあります。
専門性の高い一時的なプロジェクトや、繁忙期の業務支援には、副業人材の活用が効果的です。例えば、ウェブサイトのリニューアルプロジェクトやデジタルマーケティング、新規事業の立ち上げ時のマーケット調査などが該当します。
副業人材を活用した人員計画の具体的な進め方
副業人材の特性を理解する
副業人材を人員計画に組み込む際は、まずその特性をよく理解することが重要です。
副業人材の最大の特徴は、専門性と柔軟性です。多くの副業人材は、特定の分野で高い専門性を持っており、その知見を必要な期間だけ活用することができます。また、フルタイムでの勤務が必要ない業務に関しては、コストを抑えながら質の高い人材を確保できる可能性があります。
一方で、時間的な制約や、社内の文化や仕組みへの理解度が正社員に比べて低くなる可能性があることも認識しておく必要があります。
副業人材の視点
専門性や起用のしやすさに秀でる副業人材ですが、やはり自社のつよみは社員により担保すべきです。副業人材はどの企業でも起用できるのですから、競争力の源にはなりません。自社のつよみを育て発信する中核はやはり社員です。副業人材は社員の生産性を高めるサポートとしての活用するのが基本です。
副業人材の効果的な活用方法
副業人材を活用する際は、以下のようなアプローチが効果的です。
まず、明確な業務定義を行います。副業人材に依頼する業務は、できるだけ具体的に定義することが重要です。「○○の専門スキルを活かして△△を実現する」といった形で、期待する成果を明確にします。
次に、適切なコミュニケーション設計を行います。副業人材は時間的制約があるため、効率的なコミュニケーション方法を確立することが重要です。オンラインツールの活用や定期的な進捗確認の仕組みづくりを心がけましょう。
さらに、段階的な活用を心がけます。いきなり重要な業務を任せるのではなく、小規模なプロジェクトから始めて徐々に範囲を広げていくアプローチが効果的です。
具体的な導入事例
ある中小企業では、マーケティング戦略の立案とウェブサイトのリニューアルプロジェクトに副業人材を活用し、成功を収めました。
このケースでは、まず小規模な広告運用から始めて、その成果を確認しながら徐々に業務範囲を広げていきました。最終的には、マーケティング戦略全体の立案まで任せられる関係性を構築することができました。
成功の要因として、以下の点が挙げられます。
- プロジェクトの目的と期待する成果を明確に定義した
- 週1回のオンラインミーティングで進捗確認と課題の共有を行った
- 社内の担当者を明確に決め、スムーズな意思決定を可能にした
- 成果に応じて段階的に業務範囲を拡大した
人員計画の実行とモニタリング
KPIの設定と進捗管理
人員計画を実行に移す際は、適切なKPIを設定し、定期的にモニタリングを行うことが重要です。
例えば、以下のような指標を設定することが考えられます。
- 業務の生産性指標(一人当たりの売上高など)
- プロジェクトの進捗率
- 社員の残業時間
- 副業人材の稼働時間と成果物の品質
これらの指標を定期的にチェックし、必要に応じて計画の修正を行います。
リスク管理と対応策
人員計画を実行する際は、想定されるリスクとその対応策も考えておく必要があります。
例えば、副業人材が急に契約を終了したい場合や、予定していた正社員の採用が計画通りに進まない場合など、様々なリスクが考えられます。
これらのリスクに対しては、以下のような対応策を準備しておくことが望ましいでしょう。
- 重要な業務の属人化を防ぐためのドキュメント作成
- 複数の副業人材との関係構築
- 採用チャネルの多様化
- 社内人材の育成計画の策定
まとめ これからの時代に求められる人員計画とは
これまで見てきたように、人員計画は経営において非常に重要な要素です。特に昨今のように、事業環境が急速に変化する時代においては、正社員と副業人材を適切に組み合わせた柔軟な人員計画が求められます。
ポイントは、それぞれの特性を理解し、適材適所で活用することです。正社員には企業の中核を担う長期的な役割を、副業人材には専門性を活かした短期的・プロジェクト的な役割を担ってもらうことで、より効果的な人材活用が可能となります。
人員計画の策定と実行は、一朝一夕にはいきません。しかし、本記事で紹介した考え方やステップを参考に、自社に合った人員計画を策定し、着実に実行していくことで、必ず成果につながるはずです。
まずは小さな一歩から始めて、経験を積みながら徐々に完成度を高めていくことをお勧めします。その過程で、本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
成功に近道なし。共に頑張りましょう。
