「人が採れない」はダミー? 機能を立上げ“内製化”する人材選び

目次

はじめに

「人が採れないんです」。

地方の中小企業経営者とお会いすると、かなりの頻度でこの言葉を聞きます。求人を出しても応募がない、内定を出しても辞退される。

焦った経営者は、給与を上げたり、採用基準を下げたりして、なんとか頭数を揃えようとします。 しかし考えてみてください。

あなたは本当に人が欲しいのですか? それとも、その人がもたらす結果(成果≒機能)が欲しいのでしょうか?

これまで多くの経営者様とお仕事を共にさせていただきましたが、ほとんどのケースで、自社に必要な機能を定義しないまま、漠然と人を探し続け、永遠にミスマッチに苦しむというループが繰り返されていました。

本記事では、この不毛なループから脱却し、人材不足の時代に組織を前に進めるための、新しい人材戦略について提言します。


第1章:「全部」という言葉に隠された真実

ある日、「人が足りない」と嘆く経営者に問いかけたことがあります。 「人が足りない結果、御社ではどんな悪いことが起きていますか?」

社長は少し黙ってから力なく 「……全部」と回答されました。

営業が属人化している、良い商品なのに利益が出ない、意思決定が社長待ちになる、引き継ぎが口頭のみ…。 これらはすべて、「人がいない」から起きているのではありません。「組織に必要な『機能』が欠落している」から起きているのです。

  • 「営業マン」がいないのではなく、「誰でも売れる仕組み(営業機能)」がない。
  • 「経理担当」がいないのではなく、「正しい予実管理のフロー(財務機能)」がない。

この違いに気づかず、「優秀な営業マンさえ採れれば」「ベテランの経理さえ採れれば」と、救世主を探そうとするから、いつまで経っても問題が解決しないのです。

まずは人探しをやめ、機能の定義から始めなければなりません。 そして、その機能を実装するために、「誰の力」を借りるのが最も合理的かを考える必要があります。

考える順序が違うということです。


第2章:誰が「機能」を作れるのか? 4つの選択肢を比較する

「機能(売れる仕組みや管理フロー)」を社内に作り、最終的に自社で回せるようにする(内製化)。この目的において、外部リソースには明確な向き不向きがあります。

ここでは、4つの選択肢を比較してみましょう。

1. 事業会社(代行会社・コンサルファーム)

  • 特徴: 組織力があり、安定した品質で業務を「代行」してくれます。
  • 内製化への適性: △
  • 理由: 彼らのビジネスモデルは「契約の継続」です。ノウハウを社内に移管してしまえば契約が切れるため、構造的に「業務のブラックボックス化(依存)」が起きやすくなります。「機能を買う(アウトソース)」ことはできますが、「機能を作る(内製化)」パートナーとしては、利害が対立するため不向きな場合があります。もしノウハウを提供してくれるとなっても高額な料金を求められます。

2. フリーランス(専業個人事業主)

  • 特徴: 即戦力であり、手の動く「プレイヤー」として優秀です。
  • 内製化への適性: △〜〇
  • 理由: 彼らは「自身の労働力(時間)」を売って生計を立てています。そのため、効率よく納品することには長けていますが、「教える」「仕組み化する」といった、自分の仕事がなくなるような動きには、相応の追加コストや強い動機づけが必要です。

3. ボランティア

  • 特徴: 社会貢献意欲が高く、コストがかかりません。
  • 内製化への適性: ×
  • 理由: 責任の所在が曖昧になりがちです。機能の構築という「期限と品質」が求められるプロジェクトにおいて、本業の片手間で行うボランティアに責任ある進行を求めるのは酷であり、経営の根幹を任せるにはリスクがあります。

4. 副業人材(本業を持つプロフェッショナル)

  • 特徴: 大手企業などで最前線の「現役」として働きながら、期間限定で参画します。
  • 内製化への適性: ◎
  • 理由: 本業で生活基盤があるため、副業先での「延命(契約延長)」に執着しません。むしろ、限られた時間で成果を出すために、「さっさと仕組み化して、自分が手を動かさなくても回るようにしたい」という動機を持っています。 また、本業で培った最新の「育成ノウハウ」や「組織づくりの型」を持っているため、「機能の立ち上げ(0→1)」と「社内への移管(内製化)」において心強いパートナーとなり得るのです。

第3章:「救世主」を探すな、「設計者」を招け

今後、労働人口の減少と、市場競争の激化(競争力を出すために必要な専門性の高まり)により、全てを「何でもできる優秀な正社員」で賄うことは難しくなります。 これからの経営は、一人の人間にすべてを背負わせる「丸抱え型」から、必要な機能をパーツのように組み合わせる「モジュール型」へとシフトしなければ生き残れません。

行動指針:採用要件を「機能実装」に書き換える

そこで、求人票の書き方を変えてみてください。

「元気でコミュニケーション能力の高い営業担当募集」と書くのをやめましょう。 代わりに、こう定義するのです。 「営業プロセスを型化し、半年後に社内スタッフだけで回せるようにしてくれる、副業の営業企画プロ募集」

そうすれば、来るのは「単なる労働力」ではなく、会社に永続的な資産を残してくれる「機能の設計者」です。 副業人材というピースを、組織というレゴブロックに組み込む。その発想転換こそが、機能不全を解消する鍵となります。


まとめ

「人が採れない」と嘆くのは終わりにしましょう。 問題の本質は「人」ではなく、「機能」の欠落です。

そして、その機能を社内に実装し、内製化するために最も合理的な選択肢こそが、「ノウハウを隠す必要がなく、仕組み化を得意とする」副業人材なのです。

「誰かすごい人」を漠然と待つのではなく、「必要な機能を定義し、それを実装できるプロを副業で招き入れる」。 その冷静な戦略転換と設計図を描くことこそが、人手不足時代を生き抜く、中小企業経営者の勝機となるでしょう。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

副業人材活用の専門家。副業人材活用ラボ編集長。
富士通・アマゾンジャパン出身。
トトノエルジャパン合同会社 代表。

大企業に勤めながら副業として200社超の経営支援を実施。
経営者が副業プロ人材を活用して経営課題を解決するための実践ノウハウを発信中。

内閣府 プロフェッショナル人材活用ガイドブック2026,2024
厚生労働省 広報誌『厚生労働 2024年11月号』
野村證券株式会社 投資家向け情報誌『野村週報 2025年4月7日号』
株式会社みらいワークス プロフェッショナルアワード2023 個人賞

目次