はじめに
副業人材として200社超の企業支援に携わってきた中で、依頼が多かった営業支援について紹介します。「売上が上がらない」「営業スタッフが育たない」「新規が取れない」。相談の内容は様々ですが、現場に入り観察していくと、売れない企業にはいくつかの共通点があることに気づきます。
本記事では、支援現場で繰り返し目にしてきたパターンを整理します。
第1章:売れない中小企業の共通点
共通点① いい商品があれば売れるという奇跡に縋ってしまう
いいものは黙っていても広まった、という人口増加時代の経験を忘れられず、営業活動が後回しになっているパターンです。「営業は大切ですね」とおっしゃっていただいても、忙しい日々の中でつい後回しになるケースが非常に多いです。営業の優先度を上げていただくのに粘り強いお話が必要となります。
共通点② ターゲットの解像度が粗い
特にtoB領域の中小企業で顕著です。企業名まではアタックリストに載っていても、その先の部門部署、担当者、その人の肩書、連絡先といった情報が載っていません。業界ごとに筋の良い当たり先はだいたい決まっています。高密度コイルで成功したセルコは営業先をバイヤーでなく開発者にシフトしました。最先端のモノを高く買ってくれるのは開発者だからです。営業スタッフに「どんなお客様が筋が良いですか」と聞いてあいまいな答えしか返ってこない企業は、高確率で成果が出ていません。
共通点③ なぜ売れるかが言語化されていない
売れるスタッフはいるが、その理由が誰にも分からない。マニュアルも営業資料もなく、新人が育たない。売れるスタッフが辞めた瞬間に売上が落ちる。人の流動化が進む中、個人頼みが組織のアキレス腱になっています。
共通点④ 外注に頼りすぎて営業の地力が弱くなっている
営業代理店や紹介に頼り切りで、自社で新規顧客を獲得する筋肉が育っていません。代理店は期待値の大きい商材しか本気で売りません。紹介は枯渇します。外部依存が深まると自社の営業力は空洞化していきます。
第2章:営業の難易度は、商材によって根本から違う
営業支援に入るとき、私は「その商材を、顧客はどれくらい知っているか」を確認します。顧客が勝手知ったる商材かどうかが営業の難しさに大きく影響します。
書籍やポテトチップスのように、誰もがよく知っている商材はわざわざ説明する必要がなく、比較検討のテーブルに乗りやすい。営業は、とにかく沢山の良筋客にアタックすればよい、となります。
一方、厨房機器や工場設備のように、顧客ごとに仕様や設置環境が異なり、提案内容をカスタマイズしなければならない商材は、話が違います。顧客の現場を何度も訪問し、要件を丁寧にヒアリングし、信頼関係を積み重ねながら受注につなげていく。この種の営業は、会社への帰属意識と長期的な顧客関係が肝要です。正社員の営業マンを自前で揃えるのが定石で、外部人材やスポットの支援で代替できる性質のものではありません。
副業人材をどう起用するかは、この前提を踏まえた上で考える必要があります。
第3章:副業人材は、営業の仕組み化に向いている
営業支援の依頼を受けると、経営者から「営業マンとして活動して欲しい」と言われることがあります。気持ちは分かりますが、ここには注意が必要です。
前章で述べた通り、商材によっては外部人材が営業を担うこと自体、無理筋である場合があります。加えて、自社商材への深い理解、顧客との継続的な関係構築、社内情報へのアクセス。これらは社内の人間にしか持てない強みで、営業の現場ではそれが如実に出ます。営業代理店が期待値の大きい商材しか本気で売らないように、外部人材が自社の商材に社員と同じ熱量を持つことは構造的に難しい。営業は基本的に、自社スタッフが担うのがベターです。
一方で、副業人材が力を発揮できる領域があります。未熟な営業スタッフのメンター、営業資料や提案書の整備、ターゲット設計や営業戦略の策定。まさに第1章で挙げた問題点を解消する仕事です。営業の型を作り、社内に移管する。つまり内製化の支援者として副業人材は優れています。
もちろん、副業人材で営業そのものを担ってくれるハイスペック人材を採用できた企業もあります。ただしそれは例外的で稀なケースです。最初からそれを前提に組み込むのは宝くじで人生逆転を狙うのと同じ発想です。
第4章:現場で見た、変わった企業と変わらなかった企業の差
同じように副業人材を迎え入れても、変わる企業と変わらない企業があります。
変わった企業に共通していたのは、経営者が営業の現場に関心を持ち、副業人材を外注先ではなく「営業チームを育てるパートナー」として位置づけていたことです。副業人材が作った営業資料を社内スタッフが使い込み、ロープレを繰り返し、改善を重ねる。この循環が生まれた企業は、副業人材が去った後も営業力が残りました。
変わらなかった企業は、「なんとかしてもらおう」という姿勢で臨んでいました。仕組みを作ってもらっても使わない。資料を整備してもらっても展開しない。副業人材の稼働期間だけ一時的に改善したように見えて、終了後に元に戻る。「なんとかしてもらおう」の姿勢で成果を出すには、営業代行の外注者を、そのモチベーションが低下する前に次々と入れ替える使い捨ての道を突き進むことになります。当然弊害があり、人を次々と入れ替える様子を見た正社員は心理的安定を欠き離職率が高まります。
| 項目 | ❌ 変わらなかった企業 | ✅ 変わった企業 |
|---|---|---|
| 副業人材の位置づけ | 営業を代わりにやってくれる外注先 | 営業組織を育てるパートナー |
| 資料・仕組みへの向き合い方 | 作ってもらって満足、使わない | 使い込んで改善を重ねる |
| 経営者の関与 | 任せきり | 現場に関心を持ち続ける |
| 副業人材が去った後 | 元に戻る | 営業力が社内に残る |
営業支援における副業人材の役割は、釣り方を教えることです。釣った魚を届けることではありません。
まとめ
売れない中小企業の問題点は仕組みの未熟であることがほとんどです。ターゲットが曖昧で、営業の型がなく、外部依存が深まっている。
自社の商材が正社員の営業マンを育てて固めるべき性質のものかどうかの見極めが大切です。顧客ごとにカスタマイズが必要な商材を扱っているなら、副業人材に営業を期待するより先に、社内の営業組織を鍛える投資を優先してください。
副業人材を起用するなら、営業そのものを任せるためではなく、営業組織を強くするための伴走者として設計する。未熟なスタッフのメンターとして、資料や戦略を整備する役割として。その設計ができている経営者だけが、副業人材から本当の価値を引き出せます。
成功に近道なし。共に頑張りましょう。
