営業の”内側”を強くする 副業人材を活用した営業支援体制の構築法

昨今、多くの企業で営業改革や営業DXが進められています。しかし、その多くは思うような成果を上げられていないのが現状です。その原因の一つが、営業現場の「内側の弱さ」にあります。本記事では、副業人材を活用した効果的な営業支援体制の構築方法について、具体的に解説します。

目次

なぜ今、営業支援なのか

営業組織の生産性向上が叫ばれて久しいものの、多くの企業では営業担当者が商談以外の業務に追われ、本来の営業活動に十分な時間を割けていません。実際、ある調査によると、営業担当者の労働時間のうち、実際に顧客と向き合う時間は全体の30%程度に留まるというデータもあります。

残りの70%の時間は、提案資料の作成、見積書の作成、社内報告書の作成など、いわゆる営業支援業務に費やされています。この状況を改善し、営業担当者が顧客との商談により多くの時間を使えるようにすることで、営業効率は大きく向上します。

ここで注目したいのが、副業人材の活用です。ただし、気をつけなければならないのは、副業人材に直接的な営業活動を任せることではありません。それは、営業代行では企業の真の価値を顧客に伝えきれない可能性が高いためです。副業人材の真価は、営業支援業務を通じて、正社員の営業担当者の生産性を最大化することにあります。

営業支援で成果を出す仕組み

効果的な営業支援体制を構築するには、まず支援業務の範囲を明確にする必要があります。具体的には、以下のような業務が副業人材による支援の対象となります。

第一に、営業資料の質の向上です。多くの企業では、営業資料の作成に多大な時間が費やされていますが、その質は必ずしも高くありません。例えば、ある製造業では、経験豊富なマーケティング職の副業人材を起用し、提案資料のテンプレート作成と改善を依頼しました。その結果、資料作成時間が従来の3分の1に短縮されただけでなく、顧客からの評価も大きく向上しました。

副業人材の視点:見てくれより実利

営業資料の改善で多くの企業が陥る罠は、「きれいな資料」を作ることに注力しすぎる点です。私の経験では、営業資料は「使いやすさ」が重要でした。ある商社での支援時、最初は洗練されたデザインの提案資料を作成しましたが、現場からは「商談直前に柔軟に内容を変更できない」という声が。結果、シンプルながら現場でカスタマイズしやすいテンプレートに変更したところ、利用率が大きく向上しました。見た目の美しさより、使い勝手の良さを重視することが、実は成果への近道なのです。

第二に、営業プロセスの標準化です。優秀な営業担当者の行動やノウハウを「見える化」し、組織全体で共有可能な形にすることで、営業組織全体の底上げが図れます。ある商社では、大手企業で営業管理職を経験した副業人材を招き、営業プロセスの可視化と標準化を行いました。その結果、新人営業担当者の早期戦力化に成功し、入社1年目の営業担当者の成約率が前年比で50%向上しました。

第三に、営業データの分析と活用です。多くの企業では、CRMなどのツールを導入していても、そこから得られるデータを十分に活用できていません。データ分析の経験が豊富な副業人材を活用することで、商談の成約率向上につながる重要な示唆を得られます。例えば、あるIT企業では、データサイエンティストとして過去の商談データを分析。その結果、特定の業種における商談では、初回接触から提案までの期間を2週間以内にすることで、成約率が25%向上するという知見を得ることができました。

副業人材の視点:データが溢れる時代だからこそクレンジングにこだわる

データ分析で最も苦労するのは、実は「データの質」の問題です。CRMへの入力ルールが曖昧だったり、担当者によって記載内容にバラつきがあったりと、分析の前にまずデータの整備から始めることが少なくありません。ある企業では、最初の1ヶ月を「入力ルールの標準化」に費やしました。面倒がる現場の声もありましたが、3ヶ月後には「案件の進捗が見やすくなった」「上司への報告が楽になった」という声に変わっていました。データ分析の価値を最大化するには、地道なルール作りから始めることをお勧めします。

副業人材による営業支援の実践例

それでは、より具体的に、副業人材を活用した営業支援の実例を見ていきましょう。

営業資料の改善事例として、ある中堅メーカーの例が挙げられます。同社では、マーケティング部門出身の副業人材を採用し、商品説明資料の全面的な見直しを行いました。この副業人材は、顧客視点での資料構成の見直し、データの視覚化、訴求ポイントの明確化などを実施。その結果、営業担当者からは「説明がしやすくなった」という声が上がり、顧客からも「商品の特徴が理解しやすくなった」という評価を得ています。

また、業界別の提案テンプレート整備も、副業人材の重要な貢献分野です。ある建設資材メーカーでは、複数の業界で営業経験を持つ副業人材を採用し、業界別の提案書テンプレートを作成しました。各業界特有の課題や用語を盛り込んだテンプレートにより、営業担当者は効率的に質の高い提案書を作成できるようになりました。

営業研修プログラムの開発も、副業人材の知見が活きる分野です。大手企業で営業教育を担当していた副業人材を起用し、自社の状況に合わせた研修プログラムを開発するケースが増えています。特に、オンラインでの商談スキル向上や、デジタルツールの活用方法など、近年重要性を増している領域での研修は、外部の知見を取り入れることで効果的に進められます。

副業人材の選び方と活用のポイント

営業支援で成果を上げるには、適切な副業人材の選定が重要です。求めるべきスキルセットは、支援する業務の内容によって異なりますが、共通して重要なのは以下の点です。

まず、業務経験の質です。単なる経験年数ではなく、具体的にどのような成果を上げてきたかを重視します。特に、自社と同規模、もしくは大きな企業での経験を持つ人材は、組織的な営業活動の進め方を理解していることが多く、有益な示唆を提供してくれます。

次に、コミュニケーション能力です。副業人材は社内の営業担当者と密接に協働する必要があります。そのため、単に知識やスキルがあるだけでなく、それを効果的に伝え、実践してもらうための対話力が求められます。

さらに、プロジェクトマネジメントのスキルも重要です。営業支援の取り組みは、往々にして複数の部門に跨がります。限られた時間の中で成果を出すには、効率的なプロジェクト推進能力が不可欠です。

副業人材の視点:現場第一主義

複数の企業の営業支援を行ってきた経験から得られた教訓は、重要なのは「営業の現場を理解すること」です。私の場合、いきなり改革案を提示するのではなく、まず2週間ほどかけて営業部長や現場担当者にインタビューを行います。すると、統計データには表れない現場特有の課題が見えてきます。例えば、ある製造業では、午前中に製造部門との調整に多くの時間を取られ、午後の商談に向けた準備時間が十分に取れないという課題を発見。この気づきが、その後の業務改善の重要なポイントとなりました。

営業支援体制の構築ステップ

効果的な営業支援体制を構築するには、段階的なアプローチが有効です。まず、現状分析から始めましょう。営業担当者の時間の使い方、現在の営業プロセス、活用しているツールなどを詳細に把握します。この段階で副業人材の知見を活用することで、客観的な視点での課題抽出が可能になります。

次に、支援領域を特定します。すべての課題に一度に取り組むのではなく、優先順位を付けて段階的に改善を進めていきます。例えば、まずは提案資料の改善から始め、次に営業プロセスの標準化に取り組むといった具合です。

副業人材の採用においては、まずはトライアル期間を設けることをお勧めします。1-2ヶ月程度の期間で具体的な課題に取り組んでもらい、その成果を評価します。この際、定量的な指標(資料作成時間の削減率など)と定性的な指標(営業担当者の満足度など)の両面で評価することが重要です。

社内定着の秘訣

副業人材による改善を一時的なものではなく、組織に定着させることも重要です。そのためには、ナレッジの見える化と共有の仕組みづくりが欠かせません。例えば、改善された提案資料や営業トークなどを、社内のナレッジベースとして整備します。また、定期的な研修やワークショップを通じて、新しい手法やツールの使い方を組織全体に浸透させていきます。

成功のためのアドバイス

副業人材による営業支援を成功させるには、明確なゴール設定と、適切な役割分担が重要です。副業人材はあくまでも「支援者」であり、最終的な営業成果の責任は正社員の営業担当者にあります。この点を明確にした上で、両者が効果的に協働できる環境を整えることが、成功への近道となります。

また、成果測定の仕組みを整えることも忘れてはいけません。営業支援の効果は、売上や成約率といった最終的な成果指標だけでなく、営業担当者の活動時間の変化や、提案資料の質の向上など、中間的な指標でも測定します。これらの指標を定期的にモニタリングし、必要に応じて支援内容を調整していくことで、より効果的な営業支援体制を構築できます。

一朝一夕には実現できませんが、適切な副業人材の活用により、営業組織は大きく進化します。まずは小さな成功を積み重ね、段階的に支援領域を広げていくことをお勧めします。その積み重ねが、より強く、より効率的な営業組織を創り上げます。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

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この記事を書いた人

砂川 大輔(すながわ だいすけ)

副業人材活用の専門家/トトノエルジャパン合同会社 代表

早稲田大学先進理工学部卒業、同大学院先進理工学研究科修了。新卒でアマゾンジャパン合同会社に入社し、マーケティングを担当。ハードライン事業本部にて最優秀マーケティング表彰を受ける。世界最先端のマーケティングの現場で、個人の能力に頼らず成果を出し続ける「しくみ」の力を学ぶ。

富士通株式会社CEO室にて、企業ビジョンの刷新や経営戦略の策定など、経営の意思決定に携わる。そのかたわら、副業人材として200社を超える中小企業の現場を支援。大企業で磨かれた経営の型を、中小企業で使える形に翻訳し、企業機能の内製化と自走する組織づくりに伴走している。自らもトトノエルジャパン合同会社を経営し、会社員・副業人材・経営者の、三足のわらじで活動。

副業人材活用の知見は行政・金融機関からも注目され、内閣府『プロフェッショナル人材活用ガイドブック』に歴代最多の3度掲載(2024、2026。うち2024は2事例)。厚生労働省広報誌『厚生労働』、野村證券『野村週報』に取材記事が掲載されたほか、株式会社みらいワークス「プロフェッショナルアワード2023」個人賞を受賞。高知県、和歌山県などの自治体・公的機関のセミナーや、大学の経営学部で登壇。2024年、副業人材活用の専門メディア『副業人材活用ラボ®』を開設し、編集長を務める。2026年には『経営者のための副業人材活用・適正運用ガイドライン』を公開。

2026年7月、初の著書『副業人材活用の戦略 参画企業200社超の専門家が実践から見出した企業経営者の思考と技術』(整流出版)を刊行。

掲げるビジョンは「よいものが正当に評価される社会をつくる」。

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