「選ぶ側」だが、「選ばれる」かは別問題
副業・兼業市場は、今や無数の求職者で溢れかえっています。一見すると、これは企業にとって選び放題の買い手市場に思えます。実際、多くの経営者が、自社が「選ぶ側」だと考えています。
この考え方は正しいのですが、都合の良い側面だけを切り抜いた感があります。
というのも、「選べる」と「優秀な人材を囲える」は必ずしも直結しないからです。
実際に募集をかけてみると、「応募者は20名を超えるのに、面接時に自己紹介や提案の資料を投影するのはほんの2,3人」という現実に直面します。
応募者は採用されたくて応募しているはずなのに、自分の価値をわかりやすく示そうともしない人達が大半というわけです。
やはり、相手の立場でものを考える人、ビジネスをドライブするのに必要な素養を備えている人は少数と言えます。
副業解禁で求職者と出会う機会は増えましたが、やはり優秀な人材は希少です。従って、彼らの囲い込みには「企業は人材を選び、同時に、本物のプロ人材から選ばれる」という双方向の構図で成り立っているという理解が必要です。
本記事では、プロ人材が「協力したい」と強く感じる企業にはどんな共通点があるのかを紹介し、経営者が「選ばれる側」になるためのポイントを解説します。
第1章:なぜ「選ばれない」のか? プロ人材の意識が変化
なぜ、プロ人材に選ばれない企業が出てくるのか。それは、副業市場が成熟期に入り、プロ人材の意識が根本的に変化したからです。
1つ前の記事で解説した通り、市場は「本物のプロ」と「その他」に二極化しました。2025年現在、「本物のプロ」は既に多くの顧客を得ており、収入に困っていません。
彼らにとって副業・兼業の新規案件は、お金のための労働ではなく、自己実現の場になりました。ゆえに「自己実現の場としてふさわしい企業」と思ってもらえるか否かが選ばれる選ばれないの分水嶺になっています。
第2章:「選ばれる企業」に変わるポイント
企業の競争力は「いかに優秀な外部プロ人材を惹きつけ、パートナーシップを築けるか」に大きく左右されます。「選ばれる」ための努力は、もはや採用戦略に留まらず、経営戦略レベルの活動です。
では、プロ人材が支援したいと思う企業になるには、何をすべきでしょうか。
ここでポイントを紹介します。
ポイント1:背景を語る
プロ人材の心を動かすのは、具体的な業務内容というより、その事業が持つ社会的な意義や物語です。そして、その物語は企業が積み重ねてきた歴史や背景に裏打ちされて初めて、リアリティを帯びます。
自社の「歴史 → 将来展望 → 何をしたい」を繋いた物語を準備してください。
(歴史)
「祖父が50年前に、この地域の伝統技術の灯を消すまいと始めたのがこの会社です。時代の波に飲まれ、何度も苦しい時期がありましたが、その想いだけは守り抜いてきました」
(将来展望)
「そして今、この技術を世界に通用させ、次の世代の若者が誇りを持って働ける場所にしたいのです」
(何をしたい)
「その第一歩として、この技術を活した新商品を3年で世界に届け、売上1億円の事業に育てるのが目標です。あなたの力が必要です。」
そもそも、本物のプロは既に十分な顧客を得ています。新規の顧客1社から得られる報酬が総収入に与える影響は微々たるものです。
プロ人材が求めるのは難題にチャレンジする機会であり、企業はそのチャレンジを彩る舞台装置なのです。
ポイント2:「募集要項」から「スカウトレター」へ
プロ人材は難題にチャレンジする機会を求めます。ですから、作業項目を羅列しただけの募集要項では響きません。
次の募集から、経営者自身の言葉で綴る「スカウトレター」の形式を試してください。「問題は提起しますが、解決策はあなたの提案を歓迎します」という「余白」がプロの仮説力を引き出します。
ポイント3:決済権者をあてる
「検討するので持ち帰ります」の連続では現在の競争環境で太刀打ちできません。プロ人材はそれを理解しているので裁量権を好みます。ですので決裁権を持つ人をプロ人材の担当に据えてください。
ポイント4:状況の開示を積極的に
プロ人材の多くは、外注先ではなくパートナーとして扱われるのを好みます。事業の成果や情報を積極的に共有することで、「自分はこの事業の当事者だ」という貢献実感が生まれます。
ポイント5:契約書の依頼事項はおおざっぱに書く
プロ人材が好むのは難題です。そして難題へのチャレンジは予想外の出来事の連続です。ですので予想外が起きるのを前提に、柔軟な対応が期待できる契約書にしておくのが吉です。
細かく依頼事項を書く相手は、プロ人材というよりギグワーカーです。
第3章:「採用活動」から「魅力活動」へ
最後に、経営者に求められる重要な思考の転換を表にまとめます。それは、「空席を埋める」ための採用活動から、「パートナーを集める」ための魅力活動へのシフトです。
| 項目 | ❌ 選ばれない企業の「採用活動」 | ✅ 選ばれる企業の「魅力活動」 |
| 意識 | 選ぶ側 | 選ばれる側 |
| 発信内容 | 募集要項、作業リスト | 背景(企業の歴史、ビジョン、直面している問題) |
| 求めるもの | 労働力 | 知恵、情熱、実行力、パートナーシップ |
| 面談の場 | 企業が候補者を「評価」する場 | 互いがパートナーとして「見極め合う」場 |
| 契約の位置づけ | 作業範囲を規定する「仕様書」 | 解決すべき問題の認識合わせ |
| 報酬 | お金 | 自己実現の機会 |
まとめ
優秀なプロ人材は、難しいミッション × 決裁の速さ × オープンマインドに集まります。
もはや問われているのは金銭的な報酬ではありません。「プロ人材が時間を投資するに値するほど、面白い挑戦の舞台と思ってもらえるか」なのです。
成功に近道なし。共に頑張りましょう。
- 応募者が多いのに、優秀な人材を確保できないのはなぜですか?
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「選べる」と「優秀な人材を囲える」は直結しないからです。募集をかけると20名超が応募しても、面接で自分の価値をわかりやすく示そうとするのはほんの2、3人。相手の立場で考え、ビジネスを動かす素養を備えた人は少数です。副業解禁で出会いの機会は増えましたが、優秀な人材は依然として希少。だから「企業が選び、同時に本物のプロから選ばれる」という双方向の構図を理解する必要があります。
- なぜ、プロ人材に「選ばれない」企業が出てくるのですか?
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市場は「本物のプロ」と「その他」に二極化し、本物のプロは既に多くの顧客を得て収入に困っていません。彼らにとって新規案件は、お金のための労働ではなく自己実現の場です。だから「自己実現の場としてふさわしい企業」と思ってもらえるかどうかが、選ばれる・選ばれないの分水嶺になっています。
- プロ人材に「選ばれる企業」になるには、何を発信すればよいですか?
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作業項目の羅列ではなく、事業の背景と物語です。「歴史→将来展望→何をしたいか」をつないだ物語を準備し、経営者自身の言葉で綴る「スカウトレター」の形にする。本物のプロは既に十分な顧客がおり、新規1社の報酬は微々たるもの。彼らが求めるのは難題にチャレンジする機会であり、企業はそのチャレンジを彩る舞台装置です。「問題は提起するが解決策はあなたの提案を歓迎する」という余白が、プロの仮説力を引き出します。
- 発信以外に、プロ人材を惹きつける受け入れ方のコツは?
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3つあります。決裁権を持つ人をプロ人材の担当に据えること。「持ち帰ります」の連続では競争環境に太刀打ちできず、プロは裁量権を好みます。次に、事業の成果や情報を積極的に開示すること。パートナーとして扱われ、当事者だという貢献実感が生まれます。そして、契約書の依頼事項はおおざっぱに書くこと。難題は予想外の連続なので、柔軟な対応を前提にする。細かく書く相手は、プロ人材というよりギグワーカーです。
- 結局、経営者に求められる思考の転換とは何ですか?
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「空席を埋める採用活動」から「パートナーを集める魅力活動」へのシフトです。意識を「選ぶ側」から「選ばれる側」へ、発信を作業リストから企業の背景へ、求めるものを労働力から知恵・情熱・実行力へと切り替える。面談は評価の場ではなく、互いがパートナーとして見極め合う場。優秀なプロ人材は、難しいミッション×決裁の速さ×オープンマインドに集まります。問われているのは金銭的報酬ではなく、時間を投資するに値する面白い挑戦の舞台と思ってもらえるかです。
