「バズワード・ダンサー」に惑わされるな

今回は、2025年に多く寄せられた「副業人材を活用したがうまくいかなかった」という悩みのヒントになりそうな話をします。

目次

結論から先に言えば

副業人材活用で起きている悲劇の大半は、身も蓋もない言い方をするなら、“外部人材”という粗いカテゴライズのまま、副業人材の活用に手を付けてしまったことが原因です。

一口に”外部人材”といっても、事業会社(代行会社・制作会社・コンサルファーム)、フリーランス(専業個人)、ボランティア、副業人材(本業を持つ現役)等の選択肢があります。
この4者は、同じ「外注」に見えて、インセンティブも、責任の取り方も、価値の出し方もまるで違います。

したがって、目的に応じた起用の仕方が大切ですが、実際には、「外注先の一種」という雑なラベリングのまま、副業人材を迎え入れてしまうケースが見受けられます(中には、「請負」と「委託」の契約の違いすら理解していない経営者もいます)。
その結果、要するにこういうことが起きています。

  • 期待する役割と、稼働構造が噛み合わない
  • 期待値だけが膨張し、現場の失望が加速する
  • 「副業人材は使えない」という誤った学習が残る

悲劇を助長しているのが「バズワード・ダンサー」です。
順に説明します。


「バズワード・ダンサー」とは何か

時代の節目には、往々にして「バズワード」が世間を賑わせます。
ビジネスの世界でも同様で、これまで「DX」や「デザイン経営」といった新しい概念が、あたかもこれからの時代のスタンダードといわんばかりの勢いで紹介され、中長期的な判断を下す役割であるはずの代表取締役でさえ、軽挙妄動に手を染めてしまいます。

この拙速な判断を助長するのが「バズワード・ダンサー」です。
バズワード・ダンサーは、時代の節目に不安を感じる私たちに、魅力的なバズワードを吹きまわり、熱狂を引き起こします。私たちは安心を求める生き物ですから、彼らが語る、万事うまくいく理想の世界に魅了され、つい同調し判断を誤ってしまうのです。

ここで「インフルエンサーの吹聴には騙されないよ」という方もいますが、注意したいのは、「権威ある組織でも、悪意なくバズワード・ダンサーになってしまう」ことです。省庁をはじめとする行政や上場企業ですら、いとも簡単にバズワード・ダンサーになり得ます。

これから、半ばバズワードになりつつある「副業人材」について説明していきます。


悲劇の原因は「区別の曖昧さ」

すぐにでも本題に入りたいですが、まずは事実を整理しましょう。

副業人材の活用がうまくいかない会社ほど、導入時点での問いが曖昧です。
「とにかく人手が足りない」
「売上が足りない」

そして
「何でもできる人が欲しい」
「うちのDXを進めてほしい」
こういった“ふわっと”した希望で外部人材を呼びます。

しかし、外部人材は同じ外注ではありません。
整理のために、シンプルに4つの分類を並べます。

分類稼働の構造得意領域苦手領域内製化への適性
事業会社(代行・制作・コンサル)組織稼働/安定供給大量運用・定型業務・継続ノウハウ移管(ブラックボックス化しがち)△(設計次第)
フリーランス(専業)個人稼働/比較的柔軟実務遂行・制作・運用教育・仕組み化(要設計)△〜○
ボランティア善意ベース/責任が薄いスポット支援期限・品質・責任×
副業人材(現役)本業優先/稼働は限定設計・型化・壁打ち・移管高頻度ルーティン/即応○〜◎

見ての通り、副業人材は人手ではありますが、“ゴリゴリの稼働時間を期待できる相手”ではありません
ですので、副業人材のメリットを享受するためには、「知見」「判断」「設計」「型」といった、圧縮された価値を引きだす工夫が必要です。

外注先ごとの特徴の理解が曖昧なまま、「運用を回してほしい」「毎日進めてほしい」「即レスしてほしい」という期待を寄せてしまうとミスマッチが生じ、悲劇が始まります。


「大手企業現役のやり手が、経営状況を改善してくれる」という幻想

先ほど、「権威ある組織でも、悪意なくバズワード・ダンサーになってしまう」と述べました。

行政やマッチング事業会社が発信するメッセージは、多くの場合こうです。
「大手企業現役のやり手が、推進力高く支援し、経営上の課題を解決してくれる」
「コストも手軽で、なんなら補助金も出る」

これには、真実も含まれています。
大手企業の現場で鍛えられている人は、よほど人選を間違えない限り、高い倍率の採用を潜り抜けるポテンシャルがあり、本業の成熟した型を習得し洗練されています。

しかし、私は、行政をはじめとする権威ある組織のメッセージですら、“都合の良い切り出し”だと思うのです。
なぜなら、「大手企業でバリバリ慣らしている」を前提とするなら、本人の時間は本業に多く割かれているはずだからです。副業人材が副業に投入できる時間はさほど多くないと考えるのが自然ですが、現実の振れまわり方はそうではなく、まして「安く依頼できる」、「ときには補助金も出る」と謳い早急な導入を促すのですから、「経営者が副業人材が抱える構造的な制約について気づく機会を奪っている」とすら思えてしまいます。

仮に「数多の屍が積みあがっても構わないので、沢山稼ぐ企業を生み出し税収に効かせる」を目的とするなら、「とにかく使ってみよう」は的を得ています。

しかし、ある程度経験を積んだビジネスマンなら誰もが理解している、「制約は実現可能性を左右する」という当たり前のことが抜け落ちたメッセージが副業人材市場を席捲している状況は、経営者ならば理解しておくべきでしょう。

話を戻します。ここで経営側の期待がずれると問題が勃発します。
副業人材の稼働条件に、「ルーティン遂行者としての働き方」を重ねてしまうのです。

ルーティンワークとは、要するに次のようなものです。

  • 高頻度
  • 即応(状況変化への即時反応)
  • 継続的な微調整(小さな判断が大量に発生する)

これは、副業という稼働構造と相性が悪く、結果として現場に次のような感情が堆積します。

  • 「全然進んでいない」
  • 「使い物にならない」
  • 「バリューチェーンが詰まってしまった」

つまり、副業人材活用の失敗とは、だいたいの場合、“制約の洗い出しと活用戦略の未熟”に帰結するのです。

バズワード・ダンサーが踊れるのは、情報の非対称性により、ミスリードの余地が私たちに残されているからです。


副業人材の適所は、基本的に2つ

副業人材は、時間の制約上、万能ではありません。
万能ではないからこそ、使いどころを正しく定義してあげる必要があります。

副業人材の適所は、基本的に次の2つです。これは、支援の現場で「うまくいくパターン」を分解していくと、だいたいこの二つに落ちていく、という経験とも当てはまります。

1)企業にとっての新しい取り組み、つまり「プロジェクト」

新しい取り組みは、ルーティンではありません。
初めてのチャレンジで、手順が固まっていなくて、試行錯誤が必要で、とはいえ目標に進むための設計が必要です。

このときに価値を持つのは、

  • 目的を言語化し
  • 手段を設計し
  • 変数を特定し
  • 評価軸を整え
  • 仕組みとして“回る形”に落とし込む

という能力です。

副業人材は、まさにこの局面で効きます。
なぜなら、限られた時間の中で成果を出そうとすると、自然に「仕組み化」「型化」「移管」を志向せざるを得ないからです。
逆に言えば、仕組み化できないと、時間が足りない。この制約が、副業人材を優秀なプロジェクトマネージャーに育てていきます。経営者は、副業人材が上記の手腕を発揮できる環境を整えてから採用に踏み切るべきです。

2)知恵袋顧問としての「意思決定支援」

もう一つの適所は、知恵袋です。
ここでいう知恵袋とは、精神論や一般論ではありません。意思決定の補助です。言い換えれば「顧問」的な役割です。

中小企業では、判断軸が社内に蓄積されにくい領域があります。
AI検索、SNSアルゴリズム、広報の危機対応、採用市場の機微、BtoBマーケの計測設計…。
こうした領域は、新しかったり直面する機会が少ないといった理由で、外部の有識者の助言が役立つ局面が多いのです。

副業人材を「顧問」として置く。
この使い方は、稼働が限定されているという副業の構造と相性が良く、私自身、ここを経営者が割り切った瞬間に、協働が滑らかになる例を複数見ています。


バズワード・ダンサーに踊らされないために見るべきもの

バズワード・ダンサーに惑わされないため、押さえるポイントは、極めてシンプルです。

相手を知り、理解すること」。

人の行動は置かれた状況に大きく左右されます。副業人材のスペックは、しかるべきチェックをすれば評価できます。しかし、活用の目的や環境の準備が曖昧なままでは、成果を上げるどころか現場の負担となり、業績を押し下げるリスクが増えるだけです。

副業人材の特徴を理解し、目的を達成するための課題との相性を検討し、条件に適合した人材を見定めること。つまりは、人材採用の王道を歩む、ということです。


まとめ

副業人材活用で起きている悲劇の多くは、「副業人材がダメだった」という話ではありません。支援現場で起きる揉め事は、スキルではなく“役割設計”の不一致で説明できることが多いのです。バズワード・ダンサーに惑わされ、副業人材の特徴を理解しないまま、安易に外注一般と混ぜてしまったことが問題です。

副業人材は、ルーティン遂行者には向きにくい。これは能力の話ではなく、構造の話です。
だからこそ、副業人材の適所は基本的に二つに収束します。

  • 企業にとっての新しい取り組み=プロジェクト
  • 知恵袋顧問=意思決定支援

バズワードは美しい。しかし、美しい言葉ほど浸透するので、現場を長期で苦しめる劇薬と化しやすいものです。
経営に必要なのは、言葉に踊ることではなく、隠された本質を理解し仕組みに落とすことです。副業人材は、使いどころを間違えなければ、その“落とし込み”を強くしてくれる強力な味方たりえるのです。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

副業人材の活用が、うまくいかないのはなぜですか?

「外部人材」という粗いカテゴリーのまま手を付けてしまうからです。一口に外注といっても、事業会社・フリーランス・ボランティア・副業人材があり、インセンティブも責任の取り方も価値の出し方もまるで違います。これを「外注先の一種」と雑にラベリングして迎えると、期待する役割と稼働構造が噛み合わず、期待値だけが膨張し、「副業人材は使えない」という誤った学習が残ります。

「バズワード・ダンサー」とは、何ですか?

時代の節目に、不安を感じる私たちへ魅力的なバズワードを吹き込み、熱狂を引き起こす存在です。「DX」「デザイン経営」のように、新しい概念がスタンダードであるかのように喧伝され、経営者でさえ拙速な判断に走ってしまう。注意したいのは、インフルエンサーだけでなく、省庁などの行政や上場企業ですら、悪意なくバズワード・ダンサーになり得ることです。

「大手の現役人材が経営課題を解決してくれる」は本当ですか?

真実を含みますが、都合の良い切り出しでもあります。大手で鍛えられた人材が成熟した型を持つのは確かです。しかし「大手でバリバリ働いている」なら、その人の時間は本業に多く割かれているはず。副業に投入できる時間は多くありません。「安く、補助金も出る」と早急な導入を促すメッセージは、副業人材が抱える構造的な制約に経営者が気づく機会を奪っているとさえ言えます。

副業人材は、どんな使い方に向いているのですか?

適所は基本的に2つです。一つは、企業にとっての新しい取り組み、つまりプロジェクト。目的を言語化し、手段を設計し、仕組みとして回る形に落とし込む局面で力を発揮します。もう一つは、知恵袋顧問としての意思決定支援。AI検索やSNSアルゴリズム、広報の危機対応など、社内に判断軸が蓄積されにくい領域で、外部の有識者として助言する役割です。どちらも稼働が限られる構造と相性がよいのです。

では、副業人材に向かない使い方とは?

ルーティン遂行者としての働き方です。高頻度で、即応が必要で、小さな判断が大量に発生する業務は、本業優先で稼働が限られる副業の構造と相性が悪い。ここに期待を重ねると「全然進んでいない」「使い物にならない」という失望が堆積します。これは能力の話ではなく構造の話です。だからこそ、相手の特徴を理解し、目的との相性を検討して人材を見定める、採用の王道を歩むことが大切です。

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この記事を書いた人

砂川 大輔(すながわ だいすけ)

副業人材活用の専門家/トトノエルジャパン合同会社 代表

早稲田大学先進理工学部卒業、同大学院先進理工学研究科修了。新卒でアマゾンジャパン合同会社に入社し、マーケティングを担当。ハードライン事業本部にて最優秀マーケティング表彰を受ける。世界最先端のマーケティングの現場で、個人の能力に頼らず成果を出し続ける「しくみ」の力を学ぶ。

富士通株式会社CEO室にて、企業ビジョンの刷新や経営戦略の策定など、経営の意思決定に携わる。そのかたわら、副業人材として200社を超える中小企業の現場を支援。大企業で磨かれた経営の型を、中小企業で使える形に翻訳し、企業機能の内製化と自走する組織づくりに伴走している。自らもトトノエルジャパン合同会社を経営し、会社員・副業人材・経営者の、三足のわらじで活動。

副業人材活用の知見は行政・金融機関からも注目され、内閣府『プロフェッショナル人材活用ガイドブック』に歴代最多の3度掲載(2024、2026。うち2024は2事例)。厚生労働省広報誌『厚生労働』、野村證券『野村週報』に取材記事が掲載されたほか、株式会社みらいワークス「プロフェッショナルアワード2023」個人賞を受賞。高知県、和歌山県などの自治体・公的機関のセミナーや、大学の経営学部で登壇。2024年、副業人材活用の専門メディア『副業人材活用ラボ®』を開設し、編集長を務める。2026年には『経営者のための副業人材活用・適正運用ガイドライン』を公開。

2026年7月、初の著書『副業人材活用の戦略 参画企業200社超の専門家が実践から見出した企業経営者の思考と技術』(整流出版)を刊行。

掲げるビジョンは「よいものが正当に評価される社会をつくる」。

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