人材採用の新潮流 採用マーケティングで実現する中長期的な採用力の強化

今回は、人材採用活動を「採用オペレーション」と「採用マーケティング」という2つの観点から整理し、特に後者における副業人材の活用について解説します。

目次

採用活動の2つの軸を理解する

まず、採用活動を2つの軸で整理することでポイントが見えてきます。

1つ目の軸である「採用オペレーション」は、日々の採用実務を指します。具体的には、求人票の作成や掲載、応募者への連絡、面接日程の調整、内定手続きなどが該当します。これらは採用活動の基盤となる重要な業務ですが、どちらかというと「待ちの採用」の性質が強く、単体では採用市場における競争優位性を築きにくい側面があります。

一方、2つ目の軸である「採用マーケティング」は、より戦略的で中長期的な視点に立った活動です。自社の採用ブランドの構築、採用サイトの企画・運営、SNSなどを通じた情報発信、社員インタビューの実施と発信、採用動画の制作など、優秀な人材に自社の魅力を伝えるための施策が含まれます。さらに、応募者データの分析や採用チャネルの効果測定なども、採用マーケティングの重要な要素となります。

副業人材の視点

indeedやリクナビ、マイナビ。近年は複数の求人紹介サイトへまとめて求人票を掲載できるサービスが普及しています。その結果、求人紹介サイトは求人票であふれかえっています。このような状況下で応募者を集めるには、中長期的な視点で企業のブランドを強化することが肝要です。

採用オペレーションと採用マーケティング、求められる人材像の違い

それでは、両者では具体的にどのような人材が求められるのでしょうか。実は、必要とされる資質や経験は大きく異なります。

採用オペレーションを担う人材には、主に3つの要件が求められます。第一に、確実な実務遂行力です。応募者対応や面接調整など、日々の業務を正確かつ迅速に処理する必要があります。第二に、きめ細やかなコミュニケーション力です。応募者との初期接点として企業の印象を左右する立場にあるため、丁寧で誠実な対応が不可欠です。第三に、社内の各部門との連携力です。採用業務は様々な部門と関わるため、社内の業務フローや文化への深い理解が求められます。これらの要件を考慮すると、採用オペレーションは自社の正社員が担当するのが望ましいケースが多いといえます。

一方、採用マーケティングでは、より専門的なスキルセットが必要となります。たとえば、採用ブランディングを担当する人材には、企業ブランディングやマーケティングの専門知識が求められます。採用サイトやSNSの運用担当者には、Webディレクションやコンテンツマーケティングのスキルが必要です。データ分析担当者には、統計的な知見やツールの活用力が欠かせません。

これらの専門性は、通常の採用担当者には腕を磨く機会が無いことが多く、また一朝一夕に習得できるものでもありません。そのため、採用マーケティングは副業人材の活用が特に効果を発揮する分野といえます。副業人材は、他社での実践経験や最新のトレンドを活かしながら、即戦力として活躍できます。

副業人材の視点

求職者に応募いただけるか否かの分水嶺はネット上の情報資産です。求職者が一社一社、未知の企業を訪ね歩くことはありません。情報収集は専らインターネットで行われるため、ネット上の接点を強化する必用があります。その担当者にはマーケティング実績豊富な採用経験者を起用するとよいでしょう。幸い、マーケッターは副業人材として募りやすい職種です。

なぜ採用マーケティングが重要なのか

採用市場における企業間競争が激化する中、採用マーケティングの重要性は増す一方です。その理由は主に3つあります。

1つ目は、求職者の情報収集行動の変化です。現代の求職者は、転職サイトの求人情報だけでなく、企業のホームページ、SNS、口コミサイトなど、様々なチャネルから情報を収集します。そのため、各接点における自社の見せ方や情報発信の質が、応募獲得に大きく影響します。

2つ目は、採用競争力の源泉が変化していることです。かつての採用活動は、給与水準や福利厚生の充実度など、目に見える条件での競争が中心でした。しかし今日では、企業の理念や文化、成長機会、働き方の柔軟性など、より本質的な価値が重視されています。これらの価値を効果的に伝えるには、戦略的なマーケティングアプローチが不可欠です。

3つ目は、採用活動の効率化です。優れた採用マーケティングは、単に応募者数を増やすだけでなく、自社に適した人材からの応募を増やすことにつながります。結果として、採用担当者の負担軽減や採用コストの最適化が期待できます。

採用マーケティングにおける副業人材活用の有効性

副業人材を活用する利点として、以下の3点が特に重要です。

1つ目は、専門性の即時投入が可能な点です。採用マーケティングには、Webサイト制作、コンテンツ制作、SNS運用、データ分析など、様々な専門スキルが必要です。これらすべてを社内で賄おうとすると、人材の採用・育成に多大な時間とコストがかかります。副業人材を活用することで、必要な専門性を必要なタイミングで確保できます。

2つ目は、コストパフォーマンスの高さです。採用マーケティングの施策は、多くの場合プロジェクト単位や期間限定での実施が可能です。そのため、正社員として雇用するよりも、必要な時に必要なだけ副業人材を活用する方が、コスト面で効率的です。具体的には、フルタイム正社員と比較して10%程度のコストで起用できます。

3つ目は、外部視点による新しい価値の発見です。他社での実務経験を持つ副業人材は、自社の強みや独自性を客観的に見出し、それを効果的に訴求する方法を提案できます。特に、採用市場での競争が激化する中、このような外部視点は非常に重要です。実際に、副業人材の起用により、それまで気づかなかった自社の魅力を発見し、採用力の向上につながったという事例も多く報告されています。

副業人材を活用した採用マーケティングの進め方

では、具体的にどのように副業人材を活用すべきでしょうか。効果的な活用のためには、段階的なアプローチが重要です。

まず、自社の採用における現状分析から始めます。応募者数や採用率、採用コストなどの定量データに加え、応募者からのフィードバックや辞退理由なども分析します。この段階で、データ分析の専門性を持つ副業人材の知見を活用できます。

次に、採用ブランディングの方向性を定めます。自社の強みや独自性を明確化し、それをどのように訴求していくか、戦略を策定します。ここでは、ブランディングやマーケティングの経験を持つ副業人材の視点が有効です。

そして、具体的な施策の実行に移ります。採用サイトのリニューアル、SNSアカウントの立ち上げ、動画コンテンツの制作など、各施策の専門性に応じて適切な副業人材を起用します。この際、複数の副業人材を並行して活用することも検討に値します。

成功のための実践的ポイント

副業人材を活用した採用マーケティングを成功に導くには、いくつかの重要なポイントがあります。

最も重要なのが、社内の受け入れ体制の整備です。副業人材が力を発揮するには、社内の理解と協力が不可欠です。特に採用マーケティングでは、自社の魅力や特徴を効果的に発信する必要があるため、経営層や現場社員との密なコミュニケーションが重要となります。

また、効果的なコミュニケーション方法の確立も必要です。副業人材は常駐していないため、情報共有や進捗確認の仕組みを工夫する必要があります。オンラインツールを活用した定期的なミーティングや、プロジェクト管理ツールでの進捗共有など、効率的なコミュニケーション方法を確立しましょう。

成功事例から学ぶ:製造事業社の例

ここで、実際の導入企業の事例をご紹介します。製造業A社は、技術職の採用に苦戦していらっしゃいました。求人媒体への出稿を増やしても思うような応募が得られず、採用コストが増加する一方でした。

同社は、採用マーケティングの専門性を持つ副業人材を起用し、まず応募者データの分析から着手。その結果、技術職志望者に対して自社の技術力や開発環境の魅力が十分に伝わっていないことが判明しました。

この課題に対し、技術ブログの立ち上げや、採用サイトでの開発環境の詳細な紹介、若手エンジニアへのインタビュー動画制作などを実施。その結果、半年後には技術職の応募者数が前年比で数十%増加し、内定承諾率も向上。さらに、採用コストも削減できました。

副業人材活用の今後の展望と実践へのステップ

採用マーケティングにおける副業人材の活用は、今後さらに重要性を増すと考えられます。その背景には、採用市場のデジタル化や、若手人材を中心とした情報収集行動の変化があります。

このような変化に対応し、持続的な採用力を獲得するには、従来の採用オペレーションの改善だけでは不十分です。副業人材を活用した戦略的な採用マーケティングの展開が、競争優位性を築く重要な鍵となるでしょう。

まずは自社の採用における課題を明確化し、それに応じた専門性を持つ副業人材の検討から始めてみてはいかがでしょうか。適切な準備と運用により、御社の採用競争力を大きく高める原動力となるはずです。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

副業人材活用の専門家。副業人材活用ラボ編集長。
富士通・アマゾンジャパン出身。
トトノエルジャパン合同会社 代表。

大企業に勤めながら副業として200社超の経営支援を実施。
経営者が副業プロ人材を活用して経営課題を解決するための実践ノウハウを発信中。

内閣府 プロフェッショナル人材活用ガイドブック2026,2024
厚生労働省 広報誌『厚生労働 2024年11月号』
野村證券株式会社 投資家向け情報誌『野村週報 2025年4月7日号』
株式会社みらいワークス プロフェッショナルアワード2023 個人賞

目次