プロジェクトメンバーをどこから集めるか

はじめに

外部人材の活用が広がっています。副業人材市場の成長、補助金スキームの整備、マッチングサービスの登場。
経営者に追い風が吹いています。

しかし追い風の中で、いえむしろ追い風だからこそ、問題が頻発しています。
プロジェクトを、過度に外部人材だけで推進しようとする企業が増えているのです。

過去記事「副業人材に頼める仕事、頼めない仕事」「中小企業がタスクフォースを手にする時代」で論じた通り、外部人材といっても複数の種類があり、それぞれに得意・不得意があります。

本記事では、実際に相談が寄せられた5つケースで、プロジェクトの担い手をどこから集めるかの考え方を整理します。


第1章:担い手の選択肢と、振り分けの軸

担い手の選択肢は、内製と外注の2系統に分かれます。

内製: 正社員、パート、アルバイト
外注: 副業人材、事業会社、フリーランス、ボランティア

外注4タイプの違いについては過去記事「市場の成長期こそ原則に立ち返る」「副業人材に頼める仕事、頼めない仕事」で詳しく扱いました。
本記事ではこの外注4タイプに、内製の3つの選択肢を加えた、合計7タイプの担い手をプロジェクトにどう振り分けるかに踏み込みます。

判別の軸は、過去記事で提示した3つです。

①頻度
②即応性
③常駐性

今回は実践編ということで、各ケースに固有の観点も紹介します。
それでは見ていきましょう。


第2章:ケース①──大規模イベント出展プロデュース

プロジェクトの概要

大規模イベントへの出展。
コンセプト立案、デザインディレクション、施工会社との折衝、進行管理、事前のSNS集客、メディア向けPRが混在。

業務を分解する

このプロジェクトは、性質の異なる3つのフェーズに分けられます。

フェーズA:コンセプト設計(前半)
何を伝えるか、どんな体験を作るか。ブースのデザイン方針、来場者動線、訴求メッセージの設計。

→低頻度・知恵の凝縮型の業務です。副業人材は向きます。

フェーズB:施工会社折衝と進行管理(中盤〜本番直前)
施工会社との打合せ、見積もり調整、納期管理、現場での意思決定。

→平日昼間の連絡対応、即レス、現場対応が必要です。副業人材には向きません。正社員、またはフリーランスのプロジェクトマネージャーが適しています。

フェーズC:PR実行(直前〜当日)
プレスリリース配信、メディアキャラバン、SNS運用、当日の取材対応。

→量と即応性が必要です。事業会社(PR会社)が適切です。

推奨配分

フェーズ業務内容担い手
A:コンセプト設計ブース方針、動線、訴求メッセージ副業人材
B:進行管理施工会社折衝、納期管理、現場対応正社員 or フリーランス
C:PR実行プレスリリース、SNS、取材対応事業会社(PR会社)

著者の視点

よくある失敗は、副業人材のイベントプロデューサーに3フェーズすべてを任せてしまうことです。設計はできても、本番前の3週間に平日毎日の現場対応はできません。

設計と実行を分けて担い手を決める。これがこのプロジェクト成功の鍵です。


第3章:ケース②──内部統制のための規程整備

プロジェクトの概要

組織の拡大に伴い、属人化していた業務ルールを明文化し、内部統制を整える。
組織規程、業務分掌、職務権限、人事考課、棚卸資産管理、固定資産管理などの社内規程をゼロから策定し、定着させる。

業務を分解する

フェーズA:規程のゼロイチ策定
自社の実態に合わせた規程のドラフト作成、経営陣との議論、フェーズに応じた制度設計。雛形をそのまま使うのではなく、自社のスピード感や実態にフィットした実効性のあるルールに仕立てます。

→大企業や成長企業で内部統制の実務経験を積んできた人材の知見が直接生きます。副業人材の本領が発揮される領域です。

フェーズB:運用定着
策定した規程を社内に浸透させる、関係部署への説明、運用ルールの定着、実際の業務での適用フォロー。
「規程ができた」と「規程が機能している」の間には大きな距離があります。

→社内の関係者を巻き込み、日々の業務に組み込んでいく実働。正社員、欲を言えば代表が担う必要があります。

推奨配分

フェーズ業務内容担い手
A:規程策定ドラフト作成、経営陣との議論、制度設計副業人材
B:運用定着社内説明、業務への組み込み、適用フォロー正社員(望ましいのは代表)

著者の視点

規程整備でよくあるのは、規定が完成しても運用されない結末です。

副業人材は設計まで。定着は社内、出来れば代表が手と口を動かす。この役割分担を最初に合意することが、規程を絵に描いた餅にしないコツです。私が支援した中堅企業でも、代表が運用定着の旗振り役を担ってくださり、これに正社員が呼応したことで、3ヶ月後には社員が自然と規程を体現する習慣が根づきました。


第4章:ケース③──ハードウェア試作開発

プロジェクトの概要

特殊なハードウェアのプロトタイプ開発。3D CADによる筐体設計、3Dプリンターでのラピッドプロトタイピング、フィールド試験。

業務を分解する

このプロジェクトには、副業人材に向かない要素が複数あります。

  • 量: 3Dプリンターを何度も稼働させ、試作を反復する量的な実働が必要
  • 常駐性: 試作機器、フィールド試験など、物理的な現場での作業が前提
  • 即応性: 試作の失敗、機材トラブル、設計修正など、即時対応が頻発する
  • 設備: 高精度の3Dプリンター、CADソフト、計測機器など、設備の質が成果を左右する

副業人材はこれらをカバーできません。

推奨配分

業務業務内容担い手
試作開発筐体設計、ラピッドプロトタイピング事業会社(試作専門会社)
フィールド試験実機テスト、計測、データ収集の補助正社員+アルバイト

著者の視点

ハードウェア試作は、副業人材やフリーランスへの依頼は慎重に判断したい領域です。個人が保有している3Dプリンターや計測機器、設計ツールは、設備投資の規模で事業会社に及ばないことがほとんどです。専用のハード1台数千万円、ソフト1つに数百万円という世界です。
試作の精度や反復スピードは、設備の質に大きく左右されます。物理的な実働を要する業務は、設備が整った事業会社に任せるのが正解です。

試作の反復作業や試験補助は、アルバイトの活用が現実的な場面もあります。役割を細かく切り出すことで、人件費も最適化できます。


第5章:ケース④──自治体開拓×営業基盤構築

プロジェクトの概要

自治体へのサービス展開。CRM(顧客管理システム)導入とインサイドセールス体制の構築。そして自治体の首長や担当部署へのアプローチと商談。

業務を分解する

このプロジェクトは、性質が異なる業務が混在しています。

業務A:営業基盤の構築
CRMの導入、トークスクリプトの作成、リード管理の型作り。

→設計と仕組み化の領域です。副業人材は向きます。

業務B:自治体への営業活動
首長との面談、担当部署とのアポ取り、商談、提案、関係構築。

→対面・現地・継続的な関係構築が必要です。副業人材には向きません。正社員が適しています。
 (自治体の立場になって考えると、外部人材を寄越す企業は信用できませんね。)

推奨配分

業務業務内容担い手
A:営業基盤構築CRM導入、トークスクリプト、リード管理副業人材
B:自治体営業首長面談、商談、関係構築正社員

著者の視点

1人の人材に「CRM導入から商談まで全部」を求めてしまう経営者は少なくありません。これは、外注でハイスペ人材を採用できるようになった時代の弊害です。設計と実働は、性質も求められるスキルも違います。最初から2人体制で組むのが現実的です。

過去記事「副業人材に頼める仕事、頼めない仕事」の第7章②でも触れた通り、副業人材だけのチームにプロジェクトを任せると、実務を担う人がいなくなる事態が起きます。副業人材は設計と判断の支援が得意ですが、実働を担うのは難しい。だからこそ、実働を担う人を立てておく必要があります。


第6章:ケース⑤──大手企業とのシステム連携プロデュース

プロジェクトの概要

大手企業のアプリと自社サービスの連携プロジェクト。API連携、ID連携、ポイント連携を段階的に実現する。

業務を分解する

フェーズA:相手側との折衝、要件整理、ロードマップ策定
大手企業との交渉、技術要件・ビジネス要件の整理、段階的なロードマップ設計。

→大企業との折衝経験、PM/PdM経験が決め手になります。副業人材の真骨頂です。

フェーズB:自社側のプロジェクト推進
社内エンジニアとの調整、進捗管理、相手側との日常コミュニケーション。

→日々の連絡対応が発生します。正社員が担うのが現実的です。

推奨配分

フェーズ業務内容担い手
A:折衝・設計大手側との交渉、要件整理、ロードマップ策定副業人材
B:日常推進社内調整、進捗管理、日常コミュニケーション正社員

著者の視点

このタイプのプロジェクトは、副業人材の経験値が直接成果に結びつく好例です。大企業側の意思決定プロセスを知っている人材がいるかどうかで、合意形成のスピードがまったく変わります。
しかし、副業人材に”それっぽい”肩書やメールアドレスを与えておく工夫は必要です。自治体と同じく、外注を寄越してくる相手を信頼する大企業はいません。

副業人材を起用したからといって、社内責任者なしで回せるわけではありません。相手側との日常的なやり取りは、必ず社内の誰かが受け止める必要があります。


第7章:3つの原則

5つのケースに共通する原則を整理します。

原則①:プロジェクトをフェーズや業務単位で分解する

プロジェクト全体を1人に任せる発想は捨ててください。設計・進行管理・実働といったフェーズや業務に分解し、それぞれに最適な担い手を割り当てるのです。

原則②:副業人材は「設計と判断の支援」、実働は別系統で確保する

副業人材の本領は、知恵を凝縮した設計と判断の支援にあります。日々の実働、現地での作業、対面の継続関係。これらは内製か、副業人材以外の外注先が担う必要があります。

原則③:社内責任者を必ず立てる

外注先を何種類組み合わせても、社内に責任者がいなければチームは回りません。副業人材の進捗を取りまとめ、外注先間の連携を取り、経営者への報告を整理する。この役割は正社員が担うのが基本です。

以下に、5つのケースの担い手配分を俯瞰できる表をまとめておきます。

ケース副業人材別の外注先内製
①イベント出展コンセプト設計事業会社(PR会社)正社員(進行管理)
②規程整備規程のゼロイチ策定正社員、代表(運用定着)
③ハードウェア試作(向かない)事業会社(試作専門会社)正社員+アルバイト(試験補助)
④自治体開拓営業基盤構築フリーランス(営業基盤構築)正社員(自治体営業)
⑤システム連携設計・推進正社員(窓口・調整)

まとめ

ケースで見てきた通り、1つのプロジェクトの中に性質の異なる業務が混在しています。
「誰に、何を頼むか」を見極めたいですね。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

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この記事を書いた人

副業人材活用の専門家。副業人材活用ラボ編集長。
会社員・副業人・経営者の3つの草鞋で活動中。
富士通・アマゾンジャパン出身。
トトノエルジャパン合同会社 代表。

大企業に勤めながら副業として200社超の経営支援を実施。
経営者が副業プロ人材を活用して経営課題を解決するための実践ノウハウを発信中。

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