サーバーとドメインは自社管理。AI時代の主導権について

多くの中小企業が、ホームページの制作と運用を外注しています。ドメインとサーバーの名義、操作権限は自社で握りましょう。

私たちはAIでものを調べるようになっています。公式サイトはAIが盛んに参照する媒体です。顧客接点に占める公式サイトの影響力が増しているのです。筆者は、サーバーとドメインを、AI時代の生命線ととらえています。

目次

1. 顧客はAIに聞いて調べる 生成AIを介した情報探索と顧客接点の変化

生成AIでの検索が当たり前になっています。

日本リサーチセンターの2026年3月調査では、生成AIの利用経験率は48.5%でした。2023年3月の3.4%から上昇し、現在利用者の用途では「情報収集、リサーチ」が57.0%で最多です[1]。

Googleも、2024年8月に「AIによる概要」を日本に展開し、2025年9月には「AIモード」の日本語提供を始めました。従来のGoogle検索の結果にも、AIの回答が表示されるようになっています[2]。

クリックのされ方にも変化が見られます。Ahrefsが日本の情報収集型キーワードを分析したところ、2026年6月のAIによる概要表示時における検索1位のクリック率は9.0%でした。AIによる概要が表示されないキーワードの推移から算出した予測値24.1%を下回る水準です[3]。つまり、私たちは、AIによる概要で満足し、個別のサイトをいちいち開かなくなっているのです。

顧客がAIで検索する以上、企業はAIの検索結果を無視できなくなっています。

2. AIは公式サイトを積極的に読む 公式サイトの一次情報機能

AI検索対応は一次情報の発信からはじまります。公式サイトには、企業自身が一次情報(技術、実績、対応条件、料金など)をためられます。いわゆるオウンドサイトです。

Googleは、AIによる概要やAIモードでの表示について、基本的なSEOが引き続き有効であり、専用のファイルや特別な構造化データは不要と説明しています[4]。

AIに自社を拾ってもらうため、企業が取り組むのが一次情報の蓄積です。例えば製造業なら、加工できる材質、寸法、数量、納期、検査体制を記載します。建設業なら、対応地域、工事種別、資格、施工事例を示します。顧客の具体的な問いに答える情報です。

自社が、掲載したい情報を、思いのままに掲載できることが大切です。AIが進化し、画像や文面の作成は驚くほど速くなりました。コンテンツづくりが早くなる一方で、サイトに載せる権限(アクセス権)がなければ、せっかくの情報を発信できません。公式サイトの運用を外注に丸投げしている企業は、遅さに悩まされています。

3. ウェブサイトのしくみ サイト構成の基本:サーバー・ドメイン・ウェブサイト

企業のホームページは、主にサーバー、ドメイン、ウェブサイトという三つの要素から成り立ちます。それぞれ役割が異なり、管理する場所も同じとは限りません。

図表1 ウェブサイトを構成する三つの要素

要素役割自社で把握する対象
サーバーページのデータを保存し、閲覧者の要求に応じて配信する基盤契約者、利用サービス、管理アカウント、バックアップ
ドメインウェブやメールのアドレスに使う名前。本ラボでは fukukatsu-lab.com登録者、管理事業者、更新期限、管理アカウント
ウェブサイトサーバー上で公開する文章、画像、ページ、プログラムなど更新方法、CMSの権限、データの利用・引き継ぎ条件

ドメイン名と接続先を対応づける仕組みがDNSです。閲覧者がアドレスを入力すると、DNSで接続先を確認し、サーバーからページのデータを受け取ります。メールにもDNSを使いますが、ウェブとメールの接続先は別々に設定できます。

WordPressなどのCMSは、記事やページを作成・管理する仕組みです。CMS、ドメイン、サーバーの管理画面は別であることが多く、記事を編集できても、ドメインの更新やサーバーの変更まで行えるとは限りません。

自社のサイトは、誰が権限を有し、誰が操作できるのかまで確かめる必要があります。

4. 相手の協力待ちになる 所有権限の外部化による三つの損失:更新の停滞、クローラー制御の喪失、移管の不能

筆者が累計200社超の企業支援で接してきた中小企業には、サイトの制作に加え、サーバーやドメインの調達・管理まで外部に一任している企業があります。

問題になるのは、登録・契約の主体や操作権限が外部に集中し、自社の意思だけでは変更を進められない状態です。その影響は、次の三つの場面に現れます。

第一に、更新の負担が発信を妨げます。例えば、新しい設備を導入し提供できるサービスが増えたとしましょう。しかし、サイトに旧来のメニューしか載っていなければ、新サービスは見つけてもらえません。サイト更新のたびに見積もりや説明、日程調整が必要な体制では、結局、更新されません。

第二に、設定を確認・変更できないと、意図しないアクセス制限を解消できません。これができないと、AIにサイトの中身を読んでもらえない。つまり、AIに情報を提供できないサイト、ということになります。クローラーという、検索サービスなどがページの情報を取得するプログラムがあります。アクセスの可否は、robots.txtという巡回ルールのファイルに加え、セキュリティ機能や配信サービスの設定にも左右されます。

Cloudflareは2025年7月にAIクローラーへのアクセス制御強化を発表し、その後も検索・エージェント・学習用途を分けた設定を整備しています。仕様がしょっちゅう変わるため、定期的に設定を確認する必要があります[5]。

また、検索用の取得とAIの学習利用は、区別して扱います。Google検索のAI機能へのアクセスはGooglebotに関わり、Google-Extendedによる他のAI用途の制御とは扱いが異なります。Search ConsoleのURL検査で確認できるのもGoogle側の取得状況であり、すべてのAIサービスの検査を代替するものではありません[4]。

第三に、移管や委託先変更が進められなくなるおそれがあります。サイトの権限を持つのが外注先だけだと、担当者の退職や事業者の廃業で手続きが滞ります。そうすると、自社はおろか、新しい委託先も手が出せません。契約条件や権限の所在によって、希望する移管を実行できない場合もあります。

5. ドメインとサーバーが主導権を左右する 自社管理の定義:契約名義と管理権限の保持、更新の内製

本稿でいう自社管理には、三つの要件があります。ドメインの登録者とサーバー等の契約主体を自社に置くこと。管理アカウントと復旧手段を会社として確保すること。そして、日常の記事追加や修正を社内で実行できることです。

名義と権限に加え、公開までの手順を社内に持つことで、発信の時期を自社で決められます。設定変更や大規模な改修には、必要に応じて専門家の支援を受けます。

JPRSは、COM・NETなどのドメインについて、登録者情報を正しく保ち、制作会社など第三者の連絡先が登録されている場合は、登録者自身の連絡先へ変更するよう案内しています。公開情報には非表示や公開代行もあるため、検索画面の表示だけで名義を断定せず、契約先の管理画面でも確認します[8]。

図表2 自社管理の確認表(筆者整理)

項目確認方法確保する状態
ドメイン登録者契約先の管理画面、登録情報検索自社が登録者で、連絡先を管理している
ドメイン管理アカウントログイン、更新通知、支払設定自社で利用・復旧でき、期限を把握している
サーバー等の契約契約書、請求書、管理画面自社が契約主体となり、費用と移行条件を把握している
CMSと記事更新利用者・権限の一覧、社員による操作自社の管理者と更新担当者がおり、記事を公開・修正できる
DNS・メール設定と管理先の一覧接続先と変更時の影響を確認できる
検索・アクセス制御巡回ルール、セキュリティ設定、取得状況必要な取得を妨げていないか点検し、変更を指示できる
データ・契約終了保存先、バックアップ、引き継ぎ条件原稿・画像等の利用範囲と受け渡し方法が明確である

自社管理へ移す手順

最初に行うのは、現状の確認です。ドメインの登録者、管理事業者、サーバーの契約者、CMS管理者、メールの利用先を一枚にまとめます。そのうえで、何を変更する必要があるかを判断します。

ここで混同しやすいのが、登録者の変更と管理事業者の変更です。前者は登録の主体、後者は登録・更新を取り扱う窓口を変える手続きです。自社管理のために、両方の変更が必ず必要になるわけではありません。

管理事業者を変更する場合、.comなどの移管では認証コードが用いられ、JPドメインの指定事業者変更でも認証コードと意思確認が必要です。登録者情報の変更後に一定期間の移管制限が生じる場合もあるため、実行順序は契約先に確認します[9・10]。

図表3 自社管理へ移行する六つの手順(筆者提案)

手順自社が判断・確認すること専門家と進める作業
1 現状を把握する登録者、契約者、管理者、期限、連絡先管理画面と設定を確認し、一覧を作る
2 契約を確認する自社で保持する権限と委託する範囲データの利用条件、終了時の引き継ぎを整理する
3 名義と鍵を整える必要な変更を承認する登録者変更、アカウント移行、必要に応じた管理事業者変更
4 更新を社内で行う管理者と更新担当者を決めるCMS権限の設定、社員による記事の公開・修正の練習
5 メール等の継続を確かめる切替時期、確認項目、旧環境の終了時期DNS設定、メール・フォーム・サイト表示の動作確認
6 維持する仕組みを残す点検担当者、期限前確認、緊急連絡先手順書作成、社員の実践と習得確認

メールでは、配送先を指定するMXレコードなどのDNS設定が重要です。管理事業者の変更、DNSの変更、メールサービスの変更を分けて設計し、切替後の送受信まで確認してから旧契約の終了を判断します。

6. 名義は主導権の最小単位 関連概念:外注依存・判断空洞化・内製化原則

副業人材活用ラボでは、外部委託を続ける中で社内の知識や判断能力が失われ、委託先なしでは業務を維持できなくなる状態を「外注依存」と整理しています。そのうち、委託先の品質や価格を社内で評価できなくなる問題が「判断空洞化」です[12]。

これに対し、「内製化原則」は、自社で判断し、選び、更新できる能力を持つことを重視します。外部の専門性を利用しながら、委託の継続や変更を決める力を社内に残す考え方です[12]。

ドメインやサーバーは、自社で登録・契約し、管理権限と運用能力を備える必要があります。

この体制づくりには、ウェブ運用と引き継ぎに実務経験のある副業人材を活用できます。AIを手順の整理や文書作成に使う場合も、実際の設定と動作は担当者が確かめます。

最初は専門家が画面を見せて実演し、次に社員が操作し、専門家が監修します。ログイン、更新期限の確認、記事の修正、相談先への連絡を、社員自身が行えるか確かめます。筆者が提案する「能力移転型」は、このように社内で業務を再現・運用できる状態を成果として扱います[11]。

本稿は、既稿「経営の主導権を取りもどす」の論点を、公式サイトの管理に具体化したものです。社内に知識と権限を残すことは、適切な委託先を選び、協働を続けるためにも役立ちます。

8. 主導権を取りもどすとは

主導権がある状態とは、発信する内容、公開の時期、実際の操作、自社で決めたり行える状態です。ドメインとサーバーの名義、管理アカウント、日常の更新能力を確保することが前提です。

筆者は、AI時代ほど、企業自身が自由に発信を続けられる体制が重要になると考えています。まず、自社ドメインの登録者と、管理アカウントの所在を確認するところから始めましょう。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。


主な出典・関連資料

  1. 日本リサーチセンター(2026年4月10日)「生成AIについて 2026年3月調査」。
  2. Google「AIによる概要:ウェブにつながる新しい方法」(2024年8月16日)/「Google検索におけるAIモードを日本語で提供開始」(2025年9月9日)。
  3. Ahrefs(2026年7月21日)「AI概要でGoogle検索1位のCTRが半年で激減」。
  4. Google検索セントラル「AI機能とウェブサイト」。
  5. Cloudflare「Content Independence Day」(2025年7月1日)/「Say it once: introducing Bot Preference Sync」(2026年8月21日、9月15日追記)。
  6. 石田慶樹(DNSOPS.jp、2023年11月21日)「基礎から考える ドメイン名ライフサイクルマネジメント」p.50。岡山県の2023年10月17日発表資料を収録。
  7. JPRS(2023年12月14日)「2023年 ドメイン名重要ニュース」。
  8. JPRS「登録情報のご確認のお願い」。
  9. JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」。
  10. ICANN「FAQs for Registrants: Transferring Your Domain Name」。
  11. 砂川大輔(2026)「能力移転型とは」副業人材活用ラボ®。
  12. 砂川大輔「副業人材活用 用語集」副業人材活用ラボ®。「外注依存」「判断空洞化」「内製化原則」の各項目。

参照日:2026年10月10日。

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この記事を書いた人

砂川 大輔(すながわ だいすけ)
副業人材活用の専門家/副業人材活用ラボ®編集長/トトノエルジャパン合同会社 代表

専門領域:副業・兼業人材の企業活用、外部人材から組織への能力移転、中小企業の人的資本形成

早稲田大学先進理工学部卒業、同大学院先進理工学研究科修了。アマゾンジャパン合同会社でマーケティングに従事し、ハードライン事業本部最優秀マーケティング表彰を受賞。富士通株式会社CEO室では、企業ビジョンの刷新や経営戦略の策定など、経営の意思決定支援に携わった。

大企業での実務と並行して、副業人材として200社を超える中小企業を支援。戦略、人事、営業、マーケティングなど幅広い経営課題に携わる中で、外部人材に業務を代行してもらうだけでなく、その知識・技術・判断基準を企業内部へ移し、最終的な自走につなげる「能力移転型」の副業人材活用モデルを提唱している。現在は、副業・兼業人材を「採用する」こと以上に、企業がその能力をいかに受け取り、組織能力として蓄積するかを主要な研究・実践テーマとしている。

副業人材活用に関する実践事例は、内閣府『プロフェッショナル人材活用ガイドブック』に計3事例掲載(2024年2事例、2026年1事例)。厚生労働省広報誌『厚生労働』、野村證券『野村週報』などにも取り上げられた。株式会社みらいワークス「プロフェッショナルアワード2023」個人賞を受賞。高知県、和歌山県をはじめとする自治体・公的機関のセミナーや、大学経営学部での登壇実績を持つ。2026年には東京国際フォーラムで副業人材活用フォーラム2026Autumnを開催。

2024年、副業人材活用に特化した専門メディア『副業人材活用ラボ®』を開設し、編集長に就任。2026年には『経営者のための副業人材活用・適正運用ガイドライン』を公開し、著書『副業人材活用の戦略―参画企業200社超の専門家が実践から見出した企業経営者の思考と技術』(整流出版)を刊行。副業人材活用に関する研究発表・論文執筆にも取り組む。人材育成学会員。

研究・実践上の関心領域は、副業・兼業人材活用、外部専門人材の能力移転、中小企業の人的資本形成、企業の内製化・自走化、地域企業における外部人材活用。

掲げるビジョンは「よいものが正当に評価される社会をつくる」。

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