副業人材が組織にもたらす「創造的な遊び」の力 ~マンネリ化を打破し、イノベーションを呼び込むブリコラージュ ~

「社内の空気が淀んでいる」 「新しいアイデアが生まれてこない」 「効率化ばかりを追求して、何か大切なものを失っているのでは?」

多くの経営者が感じているこんな違和感に、副業人材を活用した「ブリコラージュ」という新しいアプローチで答えを見出す企業が増えています。

目次

なぜ今、組織に「遊び」が必要なのか

かつて、アリストテレスは「遊びをせんとや生まれけむ」と語ったわけではありませんが、人間の本質に「遊び」が深く根ざしていることを説きました。しかし現代の組織では、効率性の追求があまりに徹底されすぎていないでしょうか。

「タイムパフォーマンス」や「生産性向上」という言葉が躍る中、私たちは重要な何かを見失っているのかもしれないと感じます。それは「創造性」であり「偶発的な発見」の機会です。

自然界では、「エラー」や「ずれ」が新しい可能性を生み出す要素として機能しています。アリの巣で発見された興味深い研究があります。完璧に効率的な行動を取るアリの集団よりも、時々道を間違えるアリが混ざっている集団の方が、より効率的な新しいルートを発見する可能性が高いのです。

副業人材の視点:「ずれ」がもたらす新しい視点

私はIT企業で働きながら、日本酒の角打ち事業社さんともお仕事をご一緒させていただいています。ITの考え方を伝統的な業界へ、異なる視点を持ち込むことで、「当たり前」とされていた業界の常識に新しい風を吹き込めることを実感しています。

副業人材による「ブリコラージュ」とは

「ブリコラージュ」とは、フランスの人類学者レヴィ=ストロースが提唱した概念です。直訳すると「器用仕事」ですが、その本質は「手持ちの道具や材料を、本来の用途とは異なる形で創造的に組み合わせること」にあります。

副業人材は、まさにこの「ブリコラージュ」を組織にもたらす存在です。彼らは自身の本業で培った経験やスキルという「道具」を、全く異なる文脈で創造的に活用します。この「異質な組み合わせ」が、組織に新しい視点と可能性をもたらすのです。

副業人材の視点:既存の枠を超えた発想の価値

アマゾンでのデータ分析経験を活かして、飲食店のデータ分析を支援した際の話です。一見関係のないECの分析の手法が、実店舗のメニュー開発や在庫管理の最適化に驚くほど有効でした。「異分野の知識」は、時として想定外の価値を生み出します。

組織に「創造的な遊び」を取り入れる実践ステップ

では、具体的にどのように副業人材を活用して「ブリコラージュ」を生み出せばよいのでしょうか。ここで重要なのは、単なる「人材の追加」ではなく、「創造的な混沌」を戦略的に設計することです。

まず、副業人材の選び方です。興味深いことに、最も効果的なのは必ずしも「似た業界の経験者」ではありません。むしろ、全く異なる業界で独自の視点を培ってきた人材の方が、新しい可能性を見出せる可能性が高いのです。例えば、製造業の効率化プロジェクトに、音楽家としての経験を持つエンジニアが加わることで、「リズム」という新しい視点から作業工程の改善が実現した例もあります。

副業人材の視点:失敗を恐れない文化づくり

私が複数の組織で副業として関わる中で気づいたのは、「正解のない対話」の重要性です。本業では決して出ない「ばかげた質問」が、時として組織の本質的な課題を浮き彫りにします。失敗を恐れない文化があってこそ、この「創造的な対話」が生まれるのです。

ブリコラージュを促進する環境づくり

3M社やグーグルが採用している「15%ルール」(労働時間の15%を自由な探求に使える制度)は、まさに組織的なブリコラージュの仕組みと言えます。この「遊びの時間」は、一見すると非効率に見えますが、長期的なイノベーションの源泉となります。

副業人材の活用でも、同様の発想が重要です。例えば、週1回の「クロスファンクショナルな雑談会」を設けている企業があります。ここでは、副業人材と社員が業務の枠を超えて自由に対話します。一見無駄に見えるこの時間が、思わぬ化学反応を生み出すのです。

特に注目すべきは、この「遊び」の質です。真に価値のある「遊び」とは、単なる息抜きではありません。それは、好奇心に導かれた探求であり、既存の枠組みを解体して再構築する知的な冒険なのです。副業人材は、この「遊び」に新しい視点と可能性を持ち込む触媒となります。

イノベーションを生む組織への進化

重要なのは、この「創造的な遊び」を組織の文化として定着させることです。それは、短期的な効率と長期的なイノベーションのバランスを取る繊細な営みです。

例えば、ある製造業では、副業人材を「創造的な混乱の触媒」として位置づけています。彼らは意図的に「なぜそうするの?」という素朴な質問を投げかけ、組織の思い込みや慣習を揺さぶります。この「揺さぶり」が、新しい視点と可能性を生み出すのです。

最後に強調したいのは、この取り組みが単なる「実験」ではないということです。これは、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代における、組織の本質的な進化の過程なのです。副業人材との協創を通じて、組織は「効率」と「創造性」の新しいバランスを見出していきます。

副業人材の視点:長期的な価値創造

私の考える、価値のある変化は、組織の「思考の習慣」が変わることです。副業人材との協働を通じて、「当たり前」を疑う習慣が根付き、新しいアイデアを受け入れる土壌が育まれていく。この文化的な変容こそが、持続的なイノベーションを生む基盤となるのです。

今、多くの組織に必要なのは、「効率」と「遊び」の二項対立を超えた新しい視点と感じます。副業人材がもたらす「ブリコラージュ」は、その重要な触媒となるでしょう。変化の時代に求められる、しなやかで創造的な組織への進化。その鍵は、意外にも「遊び心」の中にあるのかもしれません。

成功に近道なし。共に頑張りましょう。

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この記事を書いた人

砂川 大輔(すながわ だいすけ)

副業人材活用の専門家/トトノエルジャパン合同会社 代表

早稲田大学先進理工学部卒業、同大学院先進理工学研究科修了。新卒でアマゾンジャパン合同会社に入社し、マーケティングを担当。ハードライン事業本部にて最優秀マーケティング表彰を受ける。世界最先端のマーケティングの現場で、個人の能力に頼らず成果を出し続ける「しくみ」の力を学ぶ。

富士通株式会社CEO室にて、企業ビジョンの刷新や経営戦略の策定など、経営の意思決定に携わる。そのかたわら、副業人材として200社を超える中小企業の現場を支援。大企業で磨かれた経営の型を、中小企業で使える形に翻訳し、企業機能の内製化と自走する組織づくりに伴走している。自らもトトノエルジャパン合同会社を経営し、会社員・副業人材・経営者の、三足のわらじで活動。

副業人材活用の知見は行政・金融機関からも注目され、内閣府『プロフェッショナル人材活用ガイドブック』に歴代最多の3度掲載(2024、2026。うち2024は2事例)。厚生労働省広報誌『厚生労働』、野村證券『野村週報』に取材記事が掲載されたほか、株式会社みらいワークス「プロフェッショナルアワード2023」個人賞を受賞。高知県、和歌山県などの自治体・公的機関のセミナーや、大学の経営学部で登壇。2024年、副業人材活用の専門メディア『副業人材活用ラボ®』を開設し、編集長を務める。2026年には『経営者のための副業人材活用・適正運用ガイドライン』を公開。

2026年7月、初の著書『副業人材活用の戦略 参画企業200社超の専門家が実践から見出した企業経営者の思考と技術』(整流出版)を刊行。

掲げるビジョンは「よいものが正当に評価される社会をつくる」。

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